東京高等裁判所 昭和43年(行ケ)142号 判決
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〔判決理由〕(本件審決を取り消すべき事由の有無について)
二 本願考案及び引用例記載のものの各目的、構成及び作用効果がいずれも原告主張のとおりであることは被告の認めて争わないところであり、この事実に徴すれば、両者はその目的、構成及び作用効果において原告主張のとおりの差異のあることは明らかである。しかして、引用例のものが本願考案とこのような差異のある以上、本願考案をもつて、引用例記載のものから、きわめて容易に推考しうる程度のものと断ずることは、甚だしく当を得ないものといわざるをえない。
本件審決は、引用例のものの遮風板を操作すれば、始動時において空気流の大部分を気筒に対して直接当たらないようにすることは充分可能である、と断じているが、冷却空気を均斉に各ミリンダーに配分することを目的とした透孔の穿設された引用例の遮風板を如何に操作すれば、それが可能なのか、本件審決が引用例のうち如何なる技術を引用したのか、その認定がすこぶる粗略であることもあり、にわかにそのいわんとする趣旨を把握することはできない。あるいは、被告が補足主張するように、引用例の遮風板をシリンダーの全長にわたるものに取り替えればそれが可能であるといわんとするものであるとしても、そして、引用例において適宜形状の遮風板に取り替えうることを予想しているとしても、それはあくまで引用例のものが目的とする冷却空気の各シリンダーへの均斉な配分のための遮風板の取替えを予想したものであることは、いうまでもないところであるから、この取替えの可能という技術思想から本願考案における始動時あるいは軽負荷時における冷却空気の遮断という技術思想を求めることは不可能であるといわざるをえない。また、被告は、空冷式内燃機関において、必要に応じて遮風板により冷却空気をシリンダーに対して遮ぎることは、本願出願前から、極めて普通に行なわれていたところである旨主張するが、このような事実は、本件審決の判断の根拠とされていないのみならず、はたして、被告の主張するような技術が空冷式内燃機関一般について普通に行なわれていたものかどうか本件証拠上明らかでない。このように、本願考案における始動時あるいは軽負荷時における冷却空気の遮断という技術思想が引用例にみられず、それが出願当時の周知技術とも認められない以上、空気の流れ方向を変える遮風板(鈑)の構造において引用例と類似する点があるとしても、本願考案をもつて登録要件を欠くものとすることができないことは、いうまでもない。
(三宅正雄 杉山克彦 武居二郎)